オペラの事件
こんにちは。
ますます寒くなってまいりましたが、皆様 いかがお過ごしでしょうか?
「演奏家は舞台上では孤独である」
というような話しを、声楽家の方に聞いたことがあります。
私はもっぱら客席から演奏を楽しむだけの気楽な立場ですが
舞台に立つ人間はそうはいきませんよね。
どのような舞台であっても出てしまえば、頼れるのは自分だけ。
大きな舞台に立つことができるのは選ばれた人間だけですが
その分、大きな重圧と孤独と戦わなければならないのでしょうか。
ブーイング
日本ではあまり見られませんが
海外では、気に入らない歌手、指揮者、演出家などに
聴衆がブーイングをすることがあります。
演奏の最後、歌の最後に、
聴衆から拍手喝采をもらう、出演者にとって最高の時間が
ブーイングによって一瞬で凍りつくのです。
音楽に対して真摯で繊細な出演者の心中を察すると
想像を絶するものがあります。
数々の才能のある音楽家がブーイングの洗礼を受けてきたことを思うと
会場の「格」によってはよくあることでもありますが・・・。
スカラ座での前代未聞の事件
最も「格」の高いオペラハウスのひとつ、ミラノ・スカラ座も
耳の肥えた聴衆が多いことから、
演奏に不満があると容赦のないブーイングが出ることでも有名です。
2006年にも、スカラ座で「アイーダ」に出演していた
人気テノールのロベルト・アラーニャさんが、
観客のブーイングの洗礼を受けました。
悲しいかなスカラ座ではよくあるブーイング・・・・
しかし、このブーイングは前代未聞の事件へと発展しました。
天井桟敷からのひどいブーイングに
憤慨したアラーニャさんは、なんと!
演奏の途中で退場、舞台を放棄したのです。
しかも、衣装を着たまま!
そのまま上演中止になってしまうかと思われた
その時、慌てて代役が登場しました。
シャツ&ジーンズの普段着で!
完璧に作り上げられた芸術的な古代エジプトの世界に
ただひとり
タイムスリップしてきたような代役歌手(ジーンズ着用)。。
・・・・・・。
このときの動画を見つけましたので、よかったら見てみてください。
衝撃的です。(いろいろな意味で)
拍手している観客も大勢いるのですが、
一部から沸き上がる敵意に満ちたブーイングに心が痛くなります。
このような事件に発展してしまうことは稀ですが、
このようなブーイングを受けても、
いつか拍手喝采を全身に浴びるまで、
何度も立ち上がる音楽家たちのメンタルはすごいなぁとぼんやり思うのでした。
それだけ、成功して拍手喝采を受けたときの瞬間は気持ちがよいものなのでしょうね。
もちろん
拍手喝采や「ブラボー!」の賞賛の声を全身に浴び
きらきらした演奏家の表情を見る方が
観客としてもとても気持ちがよいものです。